舌下免疫療法(減感作療法)
自宅で服用、副作用の少ない治療法です。
はじめに
日本人の約40%がスギ花粉症、約25%が通年性アレルギー性鼻炎であることがわかっています。どちらも、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどのつらい症状を伴うため、日常生活の様々な場面に影響を及ぼします。
中学・高校・大学受験を控えている方、学校・仕事・家事など簡単に休んだり質を落としたりできない方、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)の回避と対症療法の薬だけでは症状が抑えられずにお困りの方は、舌下免疫療法をぜひ一度ご検討ください。
舌下免疫療法 目次
舌下免疫療法とは
アレルゲンを少量ずつ3~5年の長期に渡って投与することで、体を慣らし、アレルギー反応を起こしにくい体質に改善していく治療法(減感作療法)の一つです。
以前は医療機関でアレルゲンを皮下に注射する方法(皮下免疫療法)だけしかなく、頻回の通院が必要なこともあって、あまり普及しませんでした。しかし、舌の下で治療薬を保持する方法(舌下免疫療法)が登場し、自宅で服用できること、副作用も少ないことから、現在では主流の治療法となっています。日本では、スギ花粉症とダニアレルギーによる鼻炎に対する治療薬が認可されており、既にたくさんの方々が治療を開始されています。
期待できる効果
約80%の方に効果があります。約20%の方は症状が消失し、約60%の方に症状の改善を認めます。症状が完全になくならない場合でも、症状が軽くなることによって、内服薬・点鼻薬・点眼薬などのアレルギー治療薬の減量が期待できます。ただし、治療効果がはっきり出ない方も約20%ほどいらっしゃいます。
なお、治療終了後、数年~8年程度で症状が再燃することがあります。この場合にも、舌下免疫療法を1, 2年追加することで、再び効果を得ることができます。
治療の対象となる方
問診とアレルギー検査にて、スギ花粉症またはダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎と診断を受ける必要があります。
小さなお子様が舌の下に治療薬を保持することは難しく、ご高齢の方は治療効果が出にくいと言われています。そのため、当院では5歳から65歳までの方を対象とさせていただいています。 なお、妊娠中の方、重症の喘息をお持ちの方、重い心臓病をお持ちの方、悪性腫瘍の治療中の方、免疫不全などの病気をお持ちの方、ステロイドなどの免疫抑制剤を内服されている方は、舌下免疫療法を受けることができません。
アレルギー性鼻炎の問診
鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみなど)、眼症状(目のかゆみ、涙目など)の有無と症状の強さ、季節性の有無などについてお聞きします。
花粉症による鼻炎は季節性があり、症状が出始める時期や最も症状の強い時期についてお聞きします。スギ花粉症は2月から4月にかけて症状がでる場合が多く、ダニ(ハウスダスト)アレルギーによる症状は一年を通して認められるのが特徴です。
また、QOL(生活の質)への影響についてもお聞きします。具体的には、勉強・仕事・家事への支障、集中力・思考力・記憶力の低下、人付き合い・コミュニケーションへの支障の有無と程度についてです。
アレルギー検査
現在日本で治療を受けることができる舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニアレルギーに対してのみです。スギ花粉とダニに対するアレルギー抗体(特異的IgE)の検査を行い、陽性を確認する必要があります。
当院では、スギ花粉とヤケヒョウヒダニを含む8項目の特異的IgEについて検査可能なキットを導入しています。指先から少量の血液を採取するだけで検査可能で、お子様にも負担をかけません。検査時間も約20分と非常に短く、当日すぐに結果が判明します。診断のためだけに、何度も通院する必要がありません。
もちろん、既にアレルギー検査を受けたことがあり、スギ花粉またはダニに対する特異的IgEが陽性と判明している方は、あらためて検査を受けていただく必要はありません。問診とご提示いただいた検査結果から診断を行います。
治療スケジュール
当院では、スギ花粉症に対してシダキュア®、ダニアレルギー性鼻炎に対してミティキュア®という治療薬を使って舌下免疫療法を行います。どちらのお薬も初回投与は医療機関内で行うことになっていますが、2日目以降は自宅で服用していただけます。
導入療法の開始(初回投与)から1週間後に受診していただき、内服状況や副反応についてお聞きします。治療が問題なく継続できると判断されれば、アレルゲンを増量した維持療法の開始となります。維持療法の開始後に、副反応が増強したり、初めて出現する場合もありますので、維持療法開始の1週間後にも受診していただいています。さらに2週間後(初回投与から4週間後)の受診時に治療が継続できていることを確認し、以後は1ヶ月毎の定期受診となります。定期受診の際には、内服状況、症状・QOLの変化についてお聞きします。スマートフォンアプリによる服用記録・症状日誌をぜひご活用下さい。
副反応
舌下免疫療法は、アレルギーのある方にアレルゲンを少量投与する治療法ですので、軽微なアレルギー反応(副反応)は約60%の方に出現すると報告されています。主な症状は、口の中の腫れ・かゆみ・刺激感、喉の不快感ですが、くしゃみ・鼻水・鼻づまり、下痢などが出る方もおられます。ダニアレルギーに対する治療の方が、副反応の頻度がやや高いようです。これらの副反応は次第に出なくなりますが、不快感が強い場合には、短期間の抗ヒスタミン薬内服をおすすめしています。
現在までのところ、重篤な副反応は報告されていませんが、アナフィラキシーやアナフィラキシーショックと呼ばれる強いアレルギー反応が発生する可能性も否定できません。そのため、初回の投与は医療機関内で行い、30分間は経過観察することになっています。当院では、大人の方と同様、お子様のアナフィラキシーに対しても適切な治療を素早く行えるように、病院の救急室と同等の物品やマニュアルを整備しています。
自宅でも直ぐに参照できるように、医療機関を緊急で受診すべき症状が記載された『患者携帯カード』を初回投与時にお渡ししています。
費用
小児の患者様については、お住まいの自治体の医療費助成制度を利用し、一部負担金のみで治療が可能です。詳しくは自治体のHPなどでご確認ください。
成人の患者様については、1ヶ月あたり診察費用と薬代を合わせて、スギ花粉症で2000~2500円、ダニアレルギーで3000~3500円程度の負担になります(3割負担の場合)。治療開始前にアレルギー検査を行う場合は、追加で3000円程度必要になります。
舌下免疫療法を行っていてもある程度の症状が出る可能性があります。対症療法として内服薬・点鼻薬・点眼薬などの処方を受けた場合には、それらの薬代が別途必要です。
舌下免疫療法についての詳しい情報については、下記のサイトもぜひご覧ください。
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- 院長 伊藤 守
いとうまもる診療所 院長
元大阪市立大学臨床教授
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